●  20110805 バルブステムのオイルシールを交換してみる

【ケットラって良いもんだべ】
我が家にはゴミ出し、MX用のトランポ、下駄車として大活躍している99年式ミニキャブパネルバンがあります。
フロントミッドシップFRでハンドリングが良く、バランサー入りエンジンで、意外に快適なんです。

しかしこの車は近所の中古屋から格安で仕入れたので、当初からあちこちに不具合がありました。
・ドア側キーシリンダーが渋い
・室内ヤニ汚れ
・水温上がらず
・ハンドルの中立がおかしい
・始動後白煙、オイル消費大
ポンコツと言っても良いぐらいの状態にも関わらず、なぜか一番乗る機会の多い車です。

【冬でもないのに白色吐息だよ】

前述のリストの中で、「始動後白煙、オイル消費大」ですが、いわゆるオイルが下がりの症状です。
NEWラリーXよろしく、しつこいアオり車を蹴散らすには最高の武器なのですが、エンジンにはよろしくないです。

そのオイル消費量は、1000キロで2Lぐらい。2ストバイクのように、オイルを足しながら走ってました。昔乗ってたCRM250でもそんなには喰わなかったと思います。

オドメーターは12万キロ弱でこのぐらいの距離になると、いろんな所のシール類がヘタっている可能性が高く、この症状では、バルブステムオイルシールの劣化というのが多いらしいです。

いつも車検をお願いしている近所の整備屋さんから話を聞くと、オイル下がりの場合・・というか白煙が出たら中古エンジンにリプレースするとのことで、そうした方が後々面倒がなく、今やステムシール交換はほとんどしないそうです。
シリンダーをボーリングしてオーバーサイズのピストン組んでーなんてことも滅多にしないそうです。予算があってずっと乗るならリビルト品、でなければ中古エンジンに交換すると。

かつて、テレビなどの電子機器は故障すると抵抗1本、トランジスタ1個でも交換していたものですが、今では基板などのアセンブリ単位で交換するようになりました。車のエンジンももはやバラして直すことは修理工場でもやらなくなってきたという感じでしょうか...

でっ、

今回のメモは素人整備によるステムシール交換です。時間がかかってもいいから安く済ませたいとか、自分でやってみたい向きはどうぞ。

ちなみにわたくしオーディーは、車のエンジンの整備経験などありません。
バイク(2サイクル単気筒)の整備はやりますが、あとは4サイクルエンジンの構造、作動原理を知っているぐらいです。

【2とおりある】

バルプのステムシールを交換する方法はヘッドを外すか、外さないかの2通りです。

ヘッドを外す場合、油や水の出し入れ、ヘッドガスケット交換、バルタイ合わせなどの作業が必要になりますが、机の上にヘッドを置いてステムシール交換をじっくり腰を据えて行うことができます。
逆に、ヘッドを外さない場合はそういった作業が不必要になり、手間も掛かりませんが、バルブの落下、コッターの紛失などのミスにかなり気を配る必要があります。

ここで紹介する方法はヘッドを外さない方法です。

【どんな道具が必要か?】

ちなみにミニキャブのヘッド弄りは、エンジンを降ろさなくても出来ます。
エアクリーナーボックスさえ外せば作業の邪魔になるようなものはありません。

次に、バルブを落とさないようにするための準備とバルブスプリングを外すための工具が必要になります。

バルブを落とさないようにするためのフツーのやり方といえば、プラグ穴から空気を入れてバルブを押し上げる方法です。
これには、エアコンプレッサーとプラグホールにねじ込む専用のアダプターが必要です。
2万円も出せば揃いますが用済みになると他に使い道が殆どありませんので、この方法は却下です。
別の方法を探したところ、海外のサイトで、3SGだか1Jを弄っているサイトで見つけました。なんとプラグ穴から紐を充填するという方法です。
(replace stem seal rope とか入れればヒットします。)
これならば多少手間は掛かりますがたいぶ安く済みそうです。

あとはバルブスプリングを縮める工具。
色々ありますが、このようなタイプをチョイスしました。ヤフオク送料込で2300円ぐらい。
バルブスプリングコンプレッサー

これは予想よりデカイ。使えるかどうか不安でしたが、これはこれで何とか使えました。というか使えるように何とかしました。

おもに必要な物、リストアップしました。
・エンジン整備解説書(3G83とその追補版:1200円)
・トルクレンチ
・10mmのメガネレンチ(バルブクリアランス調整で使う)
・10mmのディープソケット・インパクトドライバ用(ステムオイルシール挿入用と、部品外しにも使う)
・ラジオペンチかプライヤ
・シックネスゲージ
・ドライバー(+と、シャフトの長いやつ)
・バルブスプリングコンプレッサー
・紐(径4mmぐらい)
・紐導入用プラパイプ
・17mmソケットとラチェット(クランクを回すのに使う)
・各サイズのソケット
・ピッカー
・ピンセット
・エンジンオイル
・グリース
・部品を置いておくためのお皿など
・扇風機(暑さ対策&蚊よけです)
・作業灯

【交換部品リスト】

次のゴム類です。車検証と整備解説書を携えて三菱部販に行けばミスなく持ち帰りできます。

・ヘッドカバーのガスケット 1個
・バルブステムオイルシール 12個
・プラグホールのガスケット 3個
交換部品

【作業開始の前に】

・バッテリー端子を外す。作業中、極稀な何かの原因でクランクが回りだしたらタダでは済みませんということで。

【作業開始】

・邪魔なもんどんどん外します。っつっても大したことありません。エアクリーナボックス、イグニッションコイルぐらいなもんです。

【ヘッドカバー外れました】

・ヘッドカバーを外すと、スゴイ色してます。距離相応でしょうか?
ヘッドカバー外したところ

ヘッドカバー裏にはスラッジがこびりついていましたので、軽く掃除をしておきました。
こんな状態ですから、添加剤や洗油でのフラッシングは、スラッジが固まった状態で剥離かも知れません。やめといた方がよさそうです。
今まで普通に回ってきたのですから、スラッジはシカトしておいて、しばらく高頻度でオイル交換をした方がよさそうです。

【ロッカーアーム外れました】
・ロッカーアームを外します。外したものはそのまま皿の上に置いておきます。
オイル焼けの色がついていない所は他の部品と密着しているところなので組み付けのときに役に立ちます。
SOHCはカムシャフトを外さなくても済むので楽です。

【下死点を探せ】

・プラグホールから長ーいドライバーを差し、クランクを正面から見て時計回りに回し、ピストンを下死点に合わせます。
クランクやコンロッドがボールベアリング類に支持された2ストバイクと違い、軽自動車といえどクランクは結構渋いですね。

【ヒモヒモ作戦敢行、しかし問題が!】

・紐をプラグホールから入れます。が、ミニキャブのプラグホールの長さ10cmぐらいあり、紐を入れてもプラグのねじ穴手前でとぐろを巻いてしまいます。これではシリンダー内に紐を充填することができません。
なかなか上手く入ってくれないだな

しばらく考えた後、紐導入用プラパイプをホームセンターで調達っ。
紐が途中で曲がらない程度の内径のパイプです。これの中に紐をとおして、パイプをシリンダー内に入れます。
パイプ内では紐が折れることはありませんので、確実にシリンダー内に紐を押し込むことができるという訳。
プラパイプでススッと

どんどん押し込み、やがてシリンダーが紐で満たされ入れづらくなります。そこで一旦プラパイプをシリンダ内に押し込み、紐が入るスペースを作るということを繰り返し、これ以上入らないという位まで、紐を入れていきます。
オーディーの場合、径4mmの紐が3〜4mぐらい入りました。結構入るもんです。

【紐を圧縮!】
紐を入れ終わった直後のシリンダーは、密度が低くふわふわしている状態です。
これはこれでバルブが落ちることはありませんが、バルブシートの方向に押し上げる程の力は掛かっていません。
ですから、クランクを17mmソケットで強く回します。回りは渋いので、回し終えて力を抜いても逆回転することはありません。

こうすることによって、バルブスプリングを縮めたときにコッターが外れやすくなります。
逆に、ヒモの圧縮が甘いと、固着したコッターとリテーナーによってバルブスプリングを縮めてもバルブが開いてしまい、コッターが外れてくれません。

【バルプスプリングを外すぞ、しかし】

・新しく導入したバルブスプリングコンプレッサは、爪の横幅、厚さともデカすぎてスプリングの隙間に食い込みません。失敗か?
使えないもの持っててもショウガナイですから、ジスクグラインダーで爪を削っちゃいました。
これでバルブスプリングを縮めることに成功。しかしこの道具は使うのにコツが要り、慣れるのに結構苦労しました。
バルブスプリングを縮めているところです


【コッター!小さすぎるんだよ君は】
次はコッターを外します。
コッター、これ厄介ものです。小さくて軽いですから、ちょっと弾いただけでどっか飛んで行っちゃいます。
ピンセットでつまんで慎重に取り外しますが、強くつまんではいけません。オイルで滑りやすくなっているし、外れた反動で遠くに弾けてしまい、見失う確率がかなりあります。
緊張で手が震え、3回ぐらい落としちゃいましたが、幸運なことにすべて回収できました。わかりづらい所に落ちていかなかったのは、ミニキャブのスラントシリンダーのおかげかもしれません。

そしてこいつが勝手に遊びに行かないよう、まぁ、勝手には行く訳は無いのですが、何かがぶつかったときに弾けてしまわないように、グリースで固めておきます。
良く分からん写真ですが、グリスまみれのコッターです

【古いステムシールを外す!】

専用の工具=ステムシールプライヤーがあるみたいですが、整備解説書を見ると、普通のプライヤーで外すところの絵がかいてありました。
オーディーはそばにあったラジオペンチを使って外しました。
外し方のコツは、ステムシールをつかんだ後、はじめ軸方向に左右に回します。回るようになったら、左右にキュッキュッと回しながら引っ張るとそれほど力を必要としません。

外したオイルシールを見ると、確かに穴が広がっています。ゴムが伸びているというより、摩耗ですね。このゴムとステムとの隙間からオイルがシリンダーに漏れて所謂オイル下がりという現象になる訳です。
ステムシール。左が新、右が旧です。これも良く分からん写真ですみません

【新しいステムシールを付けるぞ】

付ける前にステムシール内面全部にちょこっとエンジンオイルを塗ります。
次、ステムに挿入するのですが、こだわる人は何かカバーを掛けてするみたいですけど、この程度の作業による傷で漏れる量は大したものではありませんし、整備解説書にも養生しろと書いていません。
とにかく軽トラですから、手でそのまま入れてあげました。
指の力で入れられる所まで入れた後、10mmのディープソケットを使ってさらに押し込みます。これでOKだと思います。
プラハンなどで打ち付けたりはしていません。取り外す前のステムシールの位置を参考に手で押し込みます。
ステムシールを押し込んでいるところ

In側、Ex側のすべてにステムシールを入れたら、全てのバルブにちゃんと挿入されているかを確認します。

【バルブスプリングを付ける】

バルブスプリングを付ける前に、バルブスプリングコンプレッサーで圧縮しておきます。
あらかじめ圧縮する

スプリングをセットしたあと、ピンセットとピッカーを使い、コッターを入れていきます。
グリスで固めておいたコッターですが、グリスを取ってはいけません。
コッターがちょろちょろ動き、作業が極めて困難になります。
コッターを入れる所(だと思う)

コッターが所定の位置に入ったら、スプリングコンプレッサーをゆっくり引っ張って抜けないことを確認してから、スプリングの圧縮を解きます。

ミニキャブはスラントシリンダーなので、Ex側のバルブがほぼ水平になり、ちょっと難しいです。

スプリング組み付け後、確認のためにコッターの組み付け状態がよそのシリンダーと同じかどうか確認します。
オーディーの場合、1か所、変に浮いているものを発見しましたので、一度スプリングを圧縮し、コッターを再度組み付け直しました。

1発分の作業を終えたら、クランクを下死点のあたりまで回し、紐をゆっくりと引き揚げます。
焦って速く引っ張ると絡まって抜けなくなるかも知れません。そうなるとヘッド御開帳〜ということになります。
コッターについているグリスをふき取り、プラハンなどでステムをポンポンと軽く叩き、コッターを馴染ませます。
※上死点でやるとバルブとピストンが接触してバルブステムが曲がるかもしれません。そうなるとバルプ交換〜色々面倒ということになりますのでくれぐれもご注意を。

【あと2発】

これで1発分終了ということで、残りの2発分もどんどんやります。

【ロッカーアーム組み付け】

整備解説書のとおり、組み付けるだけです。
組み付け方向、締め付けトルクに注意するぐらいかな?

【バルブクリアランス調整】

冷間時のバルブクリアランスの調整です。整備解説書にやり方書いています。
シックネスゲージをかませながら、調整ねじを回します。
適当なところでロックナットを締めこみ、調整完了。

温間時にも調整すれば良いのですが、時間がないし、この糞暑い中熱いもの触るのは勘弁ってことで冷間時のみ調整して調子を見ます。

【戻しておしまい】

プラグホールのオイルシール、ヘッドカバーのガスケットを新品に交換し、元の状態に組み付けます。
エアクリーナボックス、イグニッションコイルを組み付け、バッテリー端子接続です。

あと、ついでにプラグも新品に交換しました。古いプラグは碍子部分が少し剥離していました。
オイルが燃えたせいかも知れません。

【インプレッション】

各部を再チェック後、エンジン始動!
まず、ガニャガニャ言ってたエンジンが、嘘のように静かになりました。シュルシュルーって感じ。
バルブクリアランス調整のおかげですね。

しばらくアイドリング後、軽くスロットルを煽ると煙と煤が出ます。
実際に走ってみると、特に変わった様子はないです。パワーも特段変わりません。
1日放置して暖機したとき、煙は出ませんでした。そのままローで実走しレブリミット迄回すと紫っぽい白煙が出ました。
もう一度試すと煙出ませんでしたので、オイルが下がる要因がまだ残っているかも知れません。

それでも以前よりは殆ど煙が出なくなりましたので、これで良しとしましょう。
くたびれたエンジンですから、今度何かあったらリプレースになると思います。



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